糖尿病患者の風邪対策|シックデイの正しい過ごし方
風邪やインフルエンザにかかったとき、糖尿病患者は血糖値が乱れやすく注意が必要です。シックデイ(体調不良時)の血糖管理と過ごし方のポイントを解説します。
シックデイとは?
「シックデイ」とは、糖尿病患者が風邪やインフルエンザ、胃腸炎などで体調を崩したときのことを指す医療用語です。普段は安定している血糖値も、病気のときは大きく変動することがあります。
体調不良時に適切な対応をしないと、高血糖や低血糖、さらには糖尿病性ケトアシドーシスといった重篤な状態を招くこともあります。シックデイの正しい過ごし方を知っておくことは、すべての糖尿病患者にとって大切なことです。
なぜ病気のときに血糖値が乱れるのか
血糖値が上がりやすい理由
体が感染症と戦うとき、ストレスホルモン(コルチゾール、アドレナリンなど)が分泌されます。これらのホルモンはインスリンの働きを弱め、肝臓からのブドウ糖放出を促進します。その結果、食事を摂っていなくても血糖値が上昇することがあります。
発熱や炎症があると、体はより多くのエネルギーを必要とするため、肝臓が糖を作り出す働き(糖新生)も活発になります。
血糖値が下がりやすい理由
一方で、食欲がなく食事量が減ると、血糖値が下がりやすくなります。特に嘔吐や下痢がある場合は、食べたものが体に吸収されにくく、低血糖のリスクが高まります。
インスリンや血糖降下薬を服用している方は、いつも通りの量を使いながら食事量が減ると、低血糖になる危険性があります。
シックデイの基本ルール
1. こまめに血糖値を測定する
普段より頻繁に血糖値を測定しましょう。少なくとも4時間おき、できれば2〜3時間おきに測定することをおすすめします。夜間も可能であれば1回は測定してください。
血糖値が250mg/dL以上が続く場合や、300mg/dLを超える場合は、医療機関に連絡しましょう。
2. 水分を十分に摂る
発熱、嘔吐、下痢などで体から水分が失われやすくなります。脱水は血糖値をさらに上昇させ、危険な状態を招きます。少量ずつでもこまめに水分を摂りましょう。
飲み物は基本的に水やお茶がおすすめですが、食事が全く摂れない場合は、経口補水液やスポーツドリンクを活用することもあります。この場合、血糖値への影響を考慮しながら摂取してください。
3. 食事が摂れなくても炭水化物は摂取する
食欲がなくても、最低限の炭水化物は摂取する必要があります。固形物が食べられない場合は、おかゆ、うどん、アイスクリーム、プリン、果物のジュースなど、食べやすい・飲みやすいもので炭水化物を補給しましょう。
目安として、1回に50〜100kcal程度(おかゆ1杯、ジュース100ml程度)を2〜3時間おきに摂取することを心がけてください。
4. 薬の服用を自己判断で中止しない
これは非常に重要なポイントです。「食事が摂れないから薬を飲まない」と自己判断するのは危険です。特にインスリン注射をしている方は、食事が摂れなくても基礎インスリンは必要なことがほとんどです。
ただし、薬の種類によって対応が異なります。事前に主治医とシックデイ時の薬の使い方について相談し、自分専用のルールを確認しておきましょう。
5. 早めに医療機関に相談する
以下のような症状がある場合は、すぐに医療機関に連絡してください。
- 血糖値が300mg/dL以上で下がらない
- 激しい嘔吐や下痢が続く
- 水分が全く摂れない
- 意識がもうろうとする
- 呼吸が荒い、深く速い呼吸をしている
- 腹痛が強い
- 尿にケトン体が出ている(ケトン体測定器がある場合)
風邪薬や市販薬を使うときの注意点
糖質を含む薬に注意
シロップ剤やトローチには、糖分が含まれているものがあります。成分表示を確認するか、無糖タイプを選びましょう。不明な場合は薬局で相談してください。
注意が必要な成分
以下の成分を含む市販薬は、糖尿病患者は注意が必要です。
- エフェドリン・メチルエフェドリン:鼻づまりに使われる成分。血糖値を上げることがあります。
- ステロイド(プレドニゾロンなど):炎症を抑える薬ですが、血糖値を上昇させます。
- アスピリン(大量服用時):低血糖を起こす可能性があります。
市販薬を購入する際は、糖尿病であることを薬剤師に伝え、適切な薬を選んでもらいましょう。
1型糖尿病と2型糖尿病の違い
1型糖尿病の方
1型糖尿病の方は、インスリンが体内でほとんど作られていないため、シックデイ時も必ずインスリンが必要です。食事が摂れなくても、基礎インスリン(持効型インスリン)は原則として通常量を使用します。食前の速効型インスリンは、食事量に応じて調整します。
血糖値が高いまま続く場合は、補正インスリンが必要になることもあります。事前に主治医と「シックデイルール」を確認しておくことが重要です。
2型糖尿病の方
2型糖尿病で飲み薬を使用している方は、薬の種類によって対応が異なります。
- メトホルミン:脱水時は乳酸アシドーシスのリスクがあるため、嘔吐・下痢があるときは中止することがあります。
- SGLT2阻害薬:脱水や尿路感染のリスクを高めるため、シックデイ時は中止が推奨されます。
- SU薬・グリニド系:食事量が減ると低血糖のリスクが高まります。
いずれも自己判断せず、主治医の指示に従ってください。
予防が最も大切
手洗い・うがいの徹底
風邪やインフルエンザの予防の基本は手洗いです。外出先から戻ったら、必ず石けんで手を洗いましょう。アルコール消毒も効果的です。
インフルエンザワクチンの接種
糖尿病患者はインフルエンザにかかると重症化しやすいため、毎年のワクチン接種が強く推奨されています。肺炎球菌ワクチンも検討してください。
体調管理
十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動で免疫力を維持しましょう。血糖コントロールが良好であれば、感染症にも強くなります。
家族にも知っておいてもらいたいこと
糖尿病患者本人だけでなく、家族もシックデイの対応を知っておくことが大切です。体調不良時は本人の判断力も低下することがあります。
- 血糖値の測定方法を知っておく
- 低血糖時の対処法(ブドウ糖の場所、飲ませ方)を確認しておく
- すぐに連絡できる医療機関の電話番号を控えておく
- 意識がおかしい、ぐったりしているなど重症の兆候を見逃さない
シックデイに備えて準備しておくもの
- 血糖測定器と十分な量の測定チップ・針
- ブドウ糖・ジュースなど低血糖時の対応用品
- おかゆ、ゼリー飲料、スポーツドリンクなど食べやすい食品
- 経口補水液
- 体温計
- かかりつけ医の連絡先
- お薬手帳のコピー
これらを「シックデイセット」としてまとめておくと、いざというときに慌てずに済みます。
まとめ
風邪やインフルエンザにかかったとき、糖尿病患者は特別な注意が必要です。血糖値をこまめに測定し、水分と最低限の炭水化物を摂取すること。薬の服用を自己判断で中止しないこと。症状が重い場合は早めに医療機関に相談すること。
シックデイの対応は、事前の準備と知識が重要です。主治医と相談して、自分専用の「シックデイルール」を確認しておきましょう。そして、何より予防が大切です。手洗い・うがいの徹底、ワクチン接種、そして日頃の血糖コントロールを心がけてください。