実は、私たちの普段の食卓で何気なく使っている調味料が、糖尿病の方の血糖コントロールに影響を及ぼしているかもしれない、という事実をご存知でしょうか。糖尿病専門の取材を続ける女性記者の視点から、血糖値を上げやすい“隠れ糖質”を含む調味料をランキング形式でご紹介します。食事の糖質には気を配っていても、ソースやドレッシングなど調味料の糖質量は見落としがちです。
しかし調味料にも糖分は含まれており、使い方によっては無視できない影響を血糖値に与えかねません。そこで今回は、日常的によく使われる調味料をピックアップし、その糖質量の比較と血糖への影響度合いをランキング形式で解説します。「え、この調味料も?」と思う意外な盲点があるかもしれません。最後には糖尿病の方が調味料と上手に付き合うコツもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
第1位:みりん(料理に甘みを添えるが糖分たっぷり)
和食の風味付けに欠かせないみりんが堂々の第1位です。
照り焼きや煮物にコクと照りを与える調味料ですが、その正体はアルコールを含む甘い調味酒で、実は高濃度の糖分を含んでいます。実際、本みりんには100g中に約43gもの糖質が含まれており、料理に使われる調味料の中でもトップクラスの糖質含有量です。安価な「みりん風調味料」はアルコール分がない代わりに糖分はさらに高く、100g中約55.7gと本みりん以上の糖質量があります。みりんは一度に大量に摂るものではないとはいえ、甘みを出すためについ多用すると料理全体の糖質量を押し上げる原因になります。糖尿病の方はみりんの使いすぎに注意し、どうしても必要なときは使用量を最小限に抑えるか、糖質オフのみりん風調味料(人工甘味料で甘みを付けたもの)の活用を検討すると良いでしょう。
第2位:白味噌(味噌全般も実は糖質が多い)
ヘルシーな発酵食品として知られる味噌も血糖に影響しうる調味料です。
中でも西京味噌などの白味噌は仕込みに米麹を多く使うため甘みが強く、糖質も多めになっています。白味噌の糖質量は100gあたり約32.3gと高く、一見甘くない調味料ながら上位にランクインしました。一方、赤味噌や八丁味噌など大豆由来の味噌は糖質量が約15g/100gと白味噌の半分程度になります。それでも味噌全般で見れば糖質含有量は決して低くありません。味噌汁一杯に使う味噌は大さじ1程度(約18g)ですが、その中に糖質が3~4g含まれる計算です。特に甘みの強い白味噌を料理にたっぷり使うと糖質の摂取量が増えてしまうため、糖尿病の方は味噌の種類と使用量に気を配り、できれば糖質の少ない種類の味噌を選ぶようにしましょう。
第3位:焼肉のたれ(甘い焼肉用ソースの落とし穴)
お肉にからめる調味料として定番の焼肉のたれも、血糖値に大きく影響しうる甘い調味料です。
醤油や砂糖、果物エキスなどがベースになっているため甘みが強く、糖質含有量も高めです。市販の焼肉のたれの糖質量は商品にもよりますが、およそ100g中に30~32g前後と考えられます。これは約3割が糖分という計算で、例えば焼肉の際にタレを大さじ2杯(約30g)使えば糖質を約9g摂取することになります。焼肉は糖質制限中でもOKなメニューと思われがちですが、タレをたっぷり付けて食べると意外に糖質を取ってしまう盲点です。「タレ多め」で食べるのが好きな方は要注意。焼肉のタレを使う量をできるだけ減らし、素材の味を活かして食べる、あるいはレモン汁や塩胡椒で代用するなど工夫してみましょう。
第4位:とんかつソース・ウスターソース(濃厚ソース類は高糖質)
揚げ物に欠かせないソース類(とんかつソースやウスターソース、お好み焼きソースなど)も上位にランクインしました。野菜や果物を原料に作られるため一見ヘルシーなイメージがありますが、砂糖や糖分を多く含むため油断できません。中濃ソース(とんかつソース)やお好みソースの糖質量は100gあたり約30g、ウスターソースでも約26.7g含まれています。ソース類は粘度が高くドロッとしていますが、その粘りは糖の多さでもあるのです。例えばとんかつにソースを大さじ1杯かければ約5gの糖質を摂取する計算になります。揚げ物と一緒にソースをたっぷりかけると血糖値の上昇につながりやすいので注意が必要です。「ソースは基本的に注意しましょう」という専門家の指摘もあるほどで、糖尿病の方は使う量を最小限にとどめるか、ソースなしでも美味しく食べられる工夫をしてみると良いでしょう。
第5位:ケチャップ(意外と多いトマト調味料の糖分)
料理や卓上で使う機会の多いケチャップも、血糖に影響しやすい代表的な調味料です。
トマト由来で野菜のイメージがありますが、実際には砂糖やコーンシロップなどがたっぷり加えられており、100gあたり約25.9gが糖質です。これは大さじ1杯分(約15g)に糖質約4gが含まれる計算で、フレンチフライにケチャップをたっぷり付けたり、オムライスのケチャップライスに使用すると無視できない糖質量になります。からしやわさびなど他の調味料に比べ、ケチャップは一度に使う量も多めな傾向があるため油断できません。実際、オムライスはケチャップライスよりバターライスの方が糖質を大幅に抑えられるとも言われます。糖尿病の方はケチャップの使い過ぎに気を付け、代用できる場合はトマトピューレにハーブと酢を加えたソースで代替する、どうしても使いたい場合は無加糖タイプのケチャップを選ぶなど工夫しましょう。
第6位:めんつゆ(麺類のつゆにも糖分が潜む)
そば・うどんなど麺類のつゆとして便利なめんつゆにも糖質が含まれており、血糖値への影響に注意が必要です。
麺つゆは醤油ベースにみりんや砂糖、出汁を加えた調味料で、ストレートタイプの市販品で100g中約8.7gの糖質を含みます。濃縮タイプでは表示上は糖質が高めですが(3倍濃縮で20g/100g)、実際に薄めて使うため希釈後のつゆ100mlあたりでは糖質6~8g程度です。一見それほど高くないように感じますが、麺つゆは汁物として一度に摂取する量が多い調味料です。汁まで全部飲み干すと、その分糖質もまとめて摂ることになります。例えば丼いっぱいの麺つゆをほぼ飲んだ場合、糖質を軽く10g以上は摂取しかねません。糖尿病の方は麺つゆの利用量に気を配り、市販品を使う際は薄めに希釈する、または無糖の出汁と醤油で自作するなどして糖質をカットしましょう。
第7位:ポン酢(さっぱり調味料にも意外な糖)
ポン酢は柑橘果汁と醤油を合わせたさっぱりした調味料で、焼き魚や鍋料理などに重宝します。
しかし市販のポン酢には風味をまろやかにするため糖類(果糖ぶどう糖液糖やみりん等)が加えられていることが多く、知らないと糖質を見落としがちです。市販ポン酢の糖質量は100gあたり約10.5g程度で、大さじ1杯(15g)では約1.6gの糖質になります。少量ずつ使う調味料ではありますが、ドレッシング代わりにサラダにかけたり、鍋料理でたっぷりつけ汁として使うと、それなりの糖質摂取につながります。糖尿病の方がポン酢を使う際は、できるだけ食材に直接かけず小皿で適量を取りつつ付ける程度にする、またはポン酢を手作りする(醤油+酢+ゆず果汁で甘味を足さない)か市販の糖質ゼロポン酢を利用するのも良いでしょう。
第8位:醤油(使用量は少ないが糖質ゼロではない)
和食で最も基本的な調味料である醤油は、糖尿病の方にとって比較的安心して使える部類ですが、完全な糖質ゼロではありません。
醤油は大豆と小麦を発酵させて作るため微量ながら糖質を含み、濃口醤油の場合100g中約7.9g、薄口醤油でも約5.8gの糖質があります。ただし実際の使用量は料理に小さじ1~2杯程度とわずかであり、一回あたりに摂取する糖質量はごく微量です。むしろ醤油は塩味主体の調味料なので、ソースやみりんのように血糖値を急激に上げる心配は少ないでしょう。糖尿病患者さんの味方になってくれる調味料と言えますが、だからといって醤油を大量に使えば塩分過多になってしまう点には注意が必要です。醤油そのものの糖質は気にしすぎる必要はありませんが、減塩の観点からかけすぎには気を付けましょう。
第9位:マヨネーズ(糖質ほぼゼロだが種類に注意)
マヨネーズはカロリーこそ高いものの、糖質という観点では非常に少ない調味料です。
卵黄と油を主原料に作られており糖質はほとんど含まれません。市販の一般的なマヨネーズでは100g中の糖質量は約3.6g程度とごくわずかです(大さじ1杯〈15g〉では糖質0.5g程度)。そのため血糖値への直接的な影響は小さく、糖質制限中でも利用できる調味料です。ただし「カロリーハーフ」などと銘打った低カロリータイプのマヨネーズには注意が必要です。実は低カロリータイプのマヨネーズは、油分を減らす代わりにデキストリンなどの炭水化物を加えてとろみを出している製品が多く、糖質量はノーマルタイプより多めになりがちです。糖尿病の方がマヨネーズを選ぶなら、多少カロリーは高くても糖質の少ない通常タイプを適量利用する方が血糖値管理の面では安心です(もちろん摂りすぎによるカロリーオーバーには注意しましょう)。
第10位:塩(糖質ゼロだが使いすぎには別の注意)
調味料ランキングの最後は塩です。
塩は糖質を一切含まないため、血糖値には直接影響しない希少な調味料と言えます。糖質制限中は「ソースやケチャップの代わりに塩で味付けすると良い」とされることもあります。実際、糖尿病の方が味付きのタレを控えて素材に塩味で食べるよう工夫すれば、余計な糖質を避けることができます。しかし塩分の摂り過ぎは高血圧など別の健康リスクを招く恐れがあるため油断は禁物です。特に調味料から糖質を減らそうとするあまり、味気なさを補おうとして塩をかけすぎるケースには注意しましょう。塩味が濃いとご飯が進んでしまうという指摘もあり、適度な薄味を心がけることが大切です。塩は血糖への影響がないとはいえ、「減塩」とのバランスも考えつつ上手に活用してください。
調味料と賢く付き合うためのポイント(まとめ)
以上、血糖値に影響しうる調味料をランキング形式で見てきました。「調味料は少量だから」と見落としがちですが、積み重なれば血糖コントロールの妨げになりえます。最後に、糖尿病の方が調味料と上手に付き合うための実践的なヒントをいくつかご紹介します。
まず使用量を意識することが基本です。料理の味付けに甘い調味料を使う際は計量スプーンで量り、漫然とかけ過ぎないようにしましょう。また、ケチャップやソース類は料理に直接かけず別皿に少量取って付けながら食べるといった工夫で摂取量を減らせます。
次に代替できる調味料を活用しましょう。例えば砂糖やみりんの代わりに人工甘味料を使えば血糖値への影響を抑えられます。料理酒の代わりに糖質ゼロの焼酎を少量使う方法もあります。また最近では「糖質オフ」のケチャップやソース、ドレッシングなども市販されており、上手に利用すれば糖質カットに役立ちます。ただし「カロリーオフ」表示の製品は糖質が多い場合もあるため紛らわしい点に注意が必要です。
さらに味付けの発想転換も有効です。ソースや醤油ではなくレモン汁やお酢、香味野菜やハーブ、スパイス、塩胡椒などを組み合わせることで、糖を加えなくても美味しく食べる工夫ができます。例えば目玉焼きにソースの代わりに塩と胡椒で味付けする、ウインナーにケチャップではなくマヨネーズを添える、といった小さな工夫でも糖質摂取を減らすことができます。物足りなさを感じたら唐辛子や柑橘の風味を活かすなど、旨みと風味で満足度を上げる工夫をしてみましょう。
最後に、調味料はあくまで料理を引き立てる脇役です。主役である食材選びと同じくらい、調味料にも目を向けてみてください。普段から糖質の少ない調味料を意識して選ぶことで、小さな積み重ねが血糖コントロールの改善につながります。糖尿病の方でも調味料を上手に活用し、美味しさと健康の両立を目指していきましょう。