こんにちは、健康医療ライターの山崎です。
取材現場でお会いする多くの糖尿病患者さんが「最近、足腰が弱くなって怖い」と打ち明けてくださいます。
血糖コントロールだけで精一杯なのに、筋肉まで減ってしまう――それが「サルコペニア」です。
けれど、年齢を重ねても筋肉は“貯金”できます。
40代の今からでも遅くありません。この記事では、最新の研究を踏まえながら、糖尿病とサルコペニアの関係、そして今日から実践できる予防・改善策を女性記者の視点で丁寧にお伝えします。
サルコペニアとは?糖尿病と深い関係
サルコペニアは加齢などを背景に筋肉量や筋力が低下し、歩行や立ち上がりといった基本動作が難しくなる状態です。
血糖値が高い状態が続くと筋肉が分解されやすくなるため、糖尿病のある方はサルコペニアに陥るリスクが男性で約2.6倍、女性で約2.1倍に跳ね上がることが国内外の調査で示されています。
血糖管理が難しくなるだけでなく、転倒・骨折や要介護につながるおそれもあるため、早めの対策が欠かせません。
40代から高まるリスクに早めの備えを
筋肉は20代をピークに緩やかに減り始め、40代以降で顕著に低下します。
オーストラリア・フリンダース大学の研究では、平均年齢約60歳の成人656人のうち約4割が「サルコペニア予備群」と判定されました。
予備群の多くが40代・50代で筋肉量の減少をすでに経験していたのです。
「健康的に年を重ねるためには40代での介入が鍵」と研究者は強調します。
今から始める小さな習慣が、10年後の体を守ります。
1. タンパク質をしっかり摂る
筋肉づくりには材料となるタンパク質が必須です。
腎機能に問題がなければ、1日あたり体重1kgにつき1.0〜1.2gを目安に取りましょう。
肉や魚、卵、大豆製品、乳製品を毎食に散りばめると不足しにくくなります。
食後の血糖急上昇が心配な方は、低脂肪のヨーグルトや豆腐、青魚などを選ぶと安心です。

2. ビタミンDと日光の力を味方に
ビタミンDは骨だけでなく筋肉の維持にも欠かせません。
サケやサバ、キノコ類に加え、日光浴で皮膚合成を促すと効率よく体内に取り込めます。
外出が難しいときは管理栄養士に相談のうえサプリメントを併用してもよいでしょう。
ビタミンDはインスリン感受性にも関与するため、血糖コントロールの一助にもなります。
3. 野菜を添えて食事をアルカリ寄りに
肉やチーズなど酸性食品が中心になると筋肉と骨の両方に負担がかかります。
主菜に動物性たんぱくを選んだら、緑黄色野菜や根菜、海藻をしっかり添えて酸塩基バランスを整えましょう。
厚生労働省の「食事バランスガイド」でも推奨されている主食・主菜・副菜のそろった一皿を意識すると、血糖と体重の管理が同時に進みます。
4. 継続できる筋トレを日課に
筋力トレーニングはサルコペニア予防の切り札です。
ジムに通うのが難しい場合は、自重スクワットや椅子からの立ち上がり運動、ゴムバンドを使ったエクササイズなど、家でできるメニューから始めましょう。
週2〜3回、1回20分程度を目安に続けると、数カ月で太ももの張りや歩行速度の変化を体感できます。
筋肉は代謝を支える“臓器”でもあり、血糖管理にも好影響を与えます。

ふくらはぎの太さで筋量チェック
最近ブーツや靴下がゆるく感じるなら、サインかもしれません。
明治安田厚生事業団体力医学研究所などの日本人を対象とした8年追跡研究では、ふくらはぎ周囲長の減少と四肢筋量の低下に有意な相関が確認されました。
ウエストサイズが肥満の目安になるように、ふくらはぎは筋肉貯金のバロメーター。
鏡とメジャーで月1回測定し、早めに対策を講じましょう。
まとめ
サルコペニアと糖尿病は“二重苦”ではなく、裏を返せば“一石二鳥”のケアが可能です。
タンパク質とビタミンDを意識した食事、野菜で整える酸塩基バランス、続けやすい筋トレ、そしてふくらはぎモニタリング――これら4つの習慣を今日から始めれば、筋肉は年齢に関係なく応えてくれます。
未来の私たちが軽やかに歩き続けられるよう、今こそ“筋肉貯金”を始めませんか。