糖尿病でも慌てない!72時間を生き抜く防災キット完全ガイド

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大地震や台風などの災害が起きたら、自分の糖尿病ケアはどうなるのだろう――そんな不安を抱えていませんか?特に仕事で忙しい女性にとって、災害時に必要な物が手元になかったらと想像するだけで心細くなるでしょう。

実際、避難生活では食事の変化やストレスにより血糖コントロールが難しくなり、糖尿病の状態悪化につながることがあります。だからこそ、「備えあれば憂いなし」。いざというときに慌てず済むよう、72時間(3日間)しのげる防災キットを準備しておきましょう。

本記事では糖尿病を持つ働く女性の目線で、具体的かつ実践的な非常用持ち出し袋の中身とポイントをご紹介します。少しずつで構いません、一緒に備えを万全にして不安を安心に変えていきましょう。

医療用品は余裕をもって準備:インスリンや測定器など必需品

まず第一に欠かせないのが、糖尿病管理に必要な医療用品です。最低でも72時間分、可能であれば1〜2週間分のインスリンや薬を含む物資を非常袋にストックしておきましょう。災害時は支援物資がすぐ届かない可能性もあるため、「3日分は最低限、余裕があれば1〜2週間分」が合言葉です。具体的な必需品の例を以下にリストアップします。

  • インスリン製剤と注射器(またはインスリンペンと交換用針) – 使用中のインスリンが切れないよう、余分を用意します。予備のインスリンは開封後の使用期限にも注意が必要です(多くのインスリンは開封後28日以内の使用が推奨されています)。
  • 経口薬(内服薬) – メトホルミンなど服用中の血糖降下薬があれば、十分な量を準備します。高血圧や高コレステロールなど他の持病薬も忘れずに。
  • 血糖測定器 – 小型のグルコースメーターとテストストリップ(試験紙)をセットで入れます。念のため予備の測定器があると安心です。
  • 指先穿刺用のランセット(採血針)と穿刺器具 – 血糖値自己測定に必要です。消耗品なので十分な本数を。
  • 予備電池 – 血糖測定器やインスリンポンプの電池が切れると困るため、新品電池を複数用意します。充電式機器の場合はモバイルバッテリーも準備し、平時から満充電にしておきましょう。
  • インスリンポンプ関連用品 – ポンプをご使用なら、予備のインスリンカートリッジや注入セット、インフュージョンセット挿入用の予備針なども忘れずに入れておきます。
  • グルカゴン緊急キット – インスリン使用者の場合、重度低血糖に備えてグルカゴン注射キットも必携です。使い方を家族にも共有し、定期的に手順を確認しておくといざという時に落ち着いて対応できます。
  • ケトン試験紙 – 1型糖尿病の方など高血糖時のケトン体チェックが必要な場合は尿ケトン試験紙や血中ケトン測定器を用意します。
  • アルコール綿 – 手指や注射部位の消毒用にアルコールスワブ(消毒綿)を十分に入れておきます。怪我をした際の消毒にも使えます。
  • 使用済み注射針回収容器 – 使用後の針やランセットを安全に捨てられるよう、フタ付きの厚手プラスチック容器(空の洗剤ボトル等)を用意しましょう。災害時も安全に自己注射を続けるための工夫です。

次に、身分証や医療情報のコピーも忘れず入れましょう。健康保険証やお薬手帳、糖尿病連携手帳(治療内容が書かれた手帳)のコピー、現在の処方箋情報(薬剤名や用量リスト)、主治医・かかりつけ薬局の連絡先、緊急連絡先(家族等)のメモなどは必須です。

インスリンポンプや持続血糖測定器(CGM)を使っている場合は、その機種名やシリアル番号を書いたメモも入れておくと良いでしょう。これらの書類類は防水のビニール袋に入れ、水濡れや汚損から守ってください。万一避難先の医療スタッフに自分の情報を伝える必要が生じても、書面があればスムーズです。

低糖質の非常食と飲料を確保:血糖に優しい食料備蓄

災害時に備える食料・飲料も、糖尿病の視点で工夫しましょう。一般的に非常用食料は最低3日分は用意するとされていますが、糖尿病の方は血糖コントロールを乱さないよう低糖質で栄養バランスの良い食品を選ぶことが大切です。断水や停電により調理ができない状況も考え、そのまま食べられて常温保存できる食品を中心に備蓄します。具体的には以下のようなものがおすすめです。

  • 飲料水(ミネラルウォーター) – 1日あたり最低3リットルを目安に、少なくとも3日分は用意します。500mlのペットボトルなど小分けされた形で多数用意すると管理しやすく、水質も保ちやすいです。
  • 低脂肪高タンパクの缶詰 – ツナ缶・サバ缶・サケ缶・鶏肉の水煮缶など、糖質が少ないタンパク源の缶詰を揃えます。コンビーフや魚介のオイル漬け缶もOKですが、砂糖やみりんが入った甘いタレ漬け(例:缶詰の蒲焼き)は糖質過多なので避けましょう。缶詰を選ぶ際は栄養表示の糖質量をチェックする習慣をつけてください。
  • 野菜の缶詰 – 食物繊維とミネラル補給に、食べ慣れた野菜の缶詰もあると安心です。味付けは薄味で低糖質なもの(竹の子水煮、アスパラガス水煮、大豆の水煮等)が適しています。
  • フルーツの缶詰 – シロップ漬けではなく果汁漬けや水煮タイプのフルーツ缶を選びます。みかんや桃の缶詰なども「ライトシロップ」「無糖」と表示された商品なら糖質を抑えられます。
  • ナッツ類・乾物・ビーフジャーキー – アーモンドやクルミなど無塩のミックスナッツ、砂糖不使用のビーフジャーキー、小魚の佃煮(糖質控えめなもの)など、噛みごたえがあり血糖値に緩やかな間食を用意しましょう。ナッツは非常時の栄養源として優秀で、低糖質なうえ長期保存も利きます。
  • ピーナッツバター・アーモンドバター – クラッカーやビスケットに塗って食べられるペースト状食品もおすすめです。糖質をほとんど含まず、高カロリーで少量でも満足感があります。小分けパックになったものだと衛生的で持ち運びやすいでしょう。
  • 全粒粉クラッカー・低糖質シリアルバー – 主食代わりになる非常食も、できるだけ血糖値に優しいものを選びます。全粒粉やふすま使用のクラッカー、砂糖控えめのプロテインバー・シリアルバーなど1食あたり糖質15g前後のものが目安です。市販の低糖質クッキーやソイジョイ等も非常時の携行食に役立ちます。
  • 無糖飲料や経口補水※ – 甘味のない飲み物も準備しましょう。ペットボトルのお茶やブラックコーヒーの他、無調整豆乳や無糖アーモンドミルクは常温で長期保存できる低糖質飲料として便利です。豆乳は未開封で半年程度保存できる商品もあり、100mlあたり糖質2〜3gと非常に低糖質です(参考:牛乳は同量で約5g)。どうしても甘みのある飲料が欲しい場合は、血糖値に影響しにくい人工甘味料使用のスポーツドリンクや粉末状の経口補水液を活用しましょう。

経口補水(こうこうほすい)…水に塩分やミネラルを加えた飲料。脱水症状の予防に有効ですが、市販品は糖分を含むものが多いため、糖尿病の方は成分表示を確認しつつ利用してください。

非常食は「普段から食べ慣れているもの」を選ぶことも大切です。災害時は体調を崩しやすく、慣れない食品だと食欲が落ちたり、お腹を壊す可能性もあります。日頃からローリングストック(買い足しながら古いものから消費する方法)を心がけ、定期的に賞味期限をチェックして入れ替えておきましょう。

非常食にもいずれ期限が来ますが、期限が近いものは普段の食事で使って新しい物と入れ替えれば無駄になりません。また、甘い非常食ばかりだと血糖が上がってしまうため、おかず系・甘くない系の食品も取り混ぜてバランス良く備蓄してください。

血糖測定と低血糖対策ツール:緊急時こそこまめな血糖管理を

災害時は生活リズムが乱れがちで、血糖値も普段以上に変動しやすくなります。そんな中で体調を維持するには、こまめな血糖測定迅速な低血糖対策が欠かせません。非常用キットには以下のような血糖管理ツールも必ず入れておきましょう。

まず、血糖測定関連では前述のとおり測定器・試験紙・穿刺具・電池を揃えていますが、加えて予備の測定器があると安心です。避難中に紛失・故障したり電池切れになるリスクもあるため、もしもの備えとして古い機種をスペアに入れる等しておきましょう。持続血糖モニタ(CGM)を使用中の方も、センサー切れやトラブルに備えて指先採血用の測定器セットを準備してください。ストレスや普段と違う食事で高血糖や低血糖になりやすいため、いつも以上に頻繁に血糖チェックを行うことが大切です。自分の体調変化に敏感になり、早め早めの測定と対応を心がけましょう。

そして低血糖への対策も万全にしておきます。ブドウ糖タブレットは非常時の強い味方です。未開封の市販ブドウ糖タブレットは非常に長持ちしますし、素早く血糖を上げられます。1回あたり15g程度の糖質補給が低血糖治療の目安となるので、目安量が取りやすいタブレットやキャンディ、ゼリー飲料、または小分けパックの100%フルーツジュースなどを用意しましょう。日本糖尿病学会のガイドでも低血糖時にブドウ糖やビスケットなどをすぐ口にできるよう備えておくことが勧められています。例えば市販のブドウ糖5gタブレットなら3粒、砂糖入りの飴なら3~4個、紙パックジュースなら200ml程度が15gの糖質に相当します。低血糖症状が出たときはそれらで応急処置をし、落ち着いたら血糖が下がりにくい食品(クラッカーやナッツ等)を少し食べて血糖値を安定させると良いでしょう。なお、インスリンをご使用の方は繰り返しになりますがグルカゴンキットも必携です。極度の低血糖で意識を失うような事態では、周囲の人にグルカゴンを投与してもらう必要があります。家族や身近な同僚にキットの場所と使い方を教えておき、救急搬送が必要なレベルの低血糖も想定しておきましょう。

最後に、血糖管理とは直接関係しませんが簡易の救急セット(絆創膏、包帯、消毒液など)も同じ袋に入れておくと安心です。避難所では慣れない生活で怪我をすることもありますし、糖尿病で傷が治りにくい方はなおさら早めの手当てが重要だからです。

インスリンの保管方法:適温を保つ工夫を

インスリンを使っている方にとって、インスリン製剤の保管は非常時の最大の懸念かもしれません。インスリンは高温や低温に弱く、効果を保つには温度管理が重要です。普段は冷蔵保存していると思いますが、停電や持ち出し時には以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 適正温度の確保: インスリンは可能であれば冷蔵庫(2〜8℃)で保管し、開封後も極力涼しい場所で管理します。しかし災害時に冷蔵が難しい場合は、室温(15〜30℃)を目安に保つよう意識してください。米国CDC(疾病予防管理センター)によれば、冷蔵できない環境では15〜30℃がインスリン保管の理想的な範囲とされています。真夏など室温がそれ以上になる場合は、できるだけ日陰で風通しの良い場所に置き、直射日光を避けましょう。逆に冬場で寒すぎる環境では凍結に注意が必要です。インスリンは一度でも凍ると効果が失われてしまうため、凍ったものは解凍しても使用してはいけません。冷え込みそうなときは体に近い場所に保管するなど工夫してください。
  • 簡易保冷グッズの活用: 停電で冷蔵庫が使えない場合に備えて、小型の保冷バッグやアイスパック(保冷剤)を準備しておきましょう。あらかじめ保冷剤を冷凍しておき、停電時にはクーラーボックス等にインスリンと一緒に入れて温度上昇を防ぎます。このときインスリンが直接氷に触れないようタオルで包むなどして凍結を避けてください。また、FRIO(フリオ)という専用のインスリン冷却ポーチも有用です。水に浸すだけで冷却効果を発揮し、氷や電池がなくても数日間インスリンを適温に保てる優れものです(国内でも通信販売等で入手可能)。こうしたグッズを活用することで、真夏の避難でもインスリン温度管理の不安をかなり軽減できます。
  • 避難所での保管: 避難所に移動した場合は、受付やスタッフに糖尿病でインスリンが必要であることを伝えましょう。多くの避難所では医療者が常駐していたり、インスリンを冷蔵保管するためのスペースを確保してくれたりします。周囲に早めに伝えて協力を仰げば、自分だけで抱え込むよりも安全にインスリン療養を続けられます。「言い出しにくい」と遠慮せず、命に関わる大切な薬ですから遠慮なくお願いしましょう。

加えて、インスリンバイアルやペンは耐用期限にも注意が必要です。未開封なら製造から数か月〜数年持つものが多いですが、一度開封したものはメーカー指定の期間(28日程度が一般的)を過ぎると効果が落ちます。非常用にキットに入れたインスリンも、開封品であれば期限内に使い切り、新しいものと差し替えておきましょう。インスリンの予備は高価で貴重ですが、期限切れ間近のものは普段の注射で使ってしまい、非常袋には常に新しい予備を入れておくサイクルが理想です。

非常用キットの持ち運びと保管:すぐ持ち出せてどこでも安心

最後に、防災キット自体の収納方法や保管場所についてのポイントです。どんなに中身を揃えていても、いざというとき持ち出せなければ意味がありません。以下の点に留意して、非常用持ち出し袋を管理しましょう。

  • 一つにまとめて見やすく保管: 非常用の医療用品や食料は、できるだけ一つのバッグにまとめて保管します。おすすめは大容量のリュックサックです。リュックなら両肩で担げて両手が自由に使え、重い荷物も比較的楽に運べます。すぐ手の届く場所に置き、家族と同居している場合は家族全員がその場所を知っているようにしてください。「非常袋は玄関横のクローゼット上段」など、誰でもぱっと取れる場所が理想です。急な避難では自分が取りに行けない場合もあるため、小学生以上のお子さんがいる家庭では「代わりに持って出る」という訓練もしておくと安心です。
  • 持ち出しやすさの工夫: 中身が多くなりすぎる場合は、バッグを分散させるのも手です。例えば医療用品や貴重品は小さめのリュックに、食料や水は別のバッグやキャリーバッグに、と役割分担させれば一人でも運べる量に調整できます。職場と自宅の両方で災害に遭う可能性も考えられるため、複数の非常用キットを用意することも検討しましょう。実際「自宅に大型のフルセット、職場や車に簡易版を置いている」という糖尿病患者さんもいます。特にインスリン使用者は通勤中のアクシデントに備え、インスリンペンやブドウ糖など最低限を入れたポーチを常に持ち歩く習慣をつけるのも一案です。
  • 定期点検と入れ替え: 非常用キットは作ったら終わりではありません。少なくとも年に1〜2回は中身を点検し、消費期限切れの食料・試験紙・電池がないかチェックしましょう。期限が近い物は普段使いに回し、新しい物と入れ替えてください。また、持病の状態や治療法の変化(薬の変更やインスリン量の変更など)に応じて、キット内容も更新する必要があります。お薬手帳の内容や緊急連絡先が変わった場合も、コピーを差し替えるのをお忘れなく。常に「最新の自分」にフィットしたキットであるよう心がけましょう。

なお、本記事では糖尿病の方に特に必要な品目に焦点を当てましたが、水・懐中電灯・モバイルバッテリー・ラジオ・現金といった一般的な防災グッズももちろん重要です。これらは一般向けの防災サイト等を参考に揃え、糖尿病用キットと合わせて管理してください。自宅だけでなく地域の避難所や病院の場所、避難経路の確認も平時に行っておくと、非常時に一層落ち着いて行動できます。

災害への不安は、準備をすることで小さくできます。非常用キットをしっかり整えておけば、「自分にはこれだけ備えがある」という自信が生まれ、日々の暮らしの安心感も違ってくるでしょう。忙しい毎日の中で少しずつでも構いませんので、今回ご紹介したポイントを参考に、防災準備を進めてみてください。

あなたの備えが万全であれば、もしもの時もきっと乗り越えられるはずです。私たち糖尿病患者が災害を生き抜く力は、日頃の備えという形で手に入れることができます。一緒に「備えあれば憂いなし」の安心を手にしましょう。災害時でもあなたが笑顔でいられるよう、心から願っています。